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NEWS| 2017/01/16 

4th Full Album 「&DNA」 オフィシャルインタビュー公開!

オフィシャルインタビュー「&DNAのDNA」


 結局のところ、パスピエというバンドは内も外もいつだって激しくせめぎ合っている。バンドの頭脳である成田ハネダがクラシックを出自に持っていること、そのアカデミックな音楽原体験の反動としてバンドミュージックに憧憬を抱いたこともそう。つねに一筋縄ではいかないプログレッシブなサウンドプロダクションとアンサンブルをもって真新しいポップミュージック像を創造しようとしていることもそう。そして、紅一点の大胡田なつきというボーカリストの虚実が入り交じったミステリアスなアーティスト性もそう。


 そういったパスピエというバンドの構造を踏まえてみても、デビュー5周年を迎えた2016年、その7月にリリースしたシングル「永すぎた春/ハイパーリアリスト」のアーティスト写真において“外部に”素顔を公開したことは、“内部にも”大きな影響を与えた。パスピエにとって素顔をさらけ出すことは、音楽的なベールを脱ぐことと同義である。


 つまり、これまで以上にサウンドにおいても歌においても虚像と実像のせめぎ合いが苛烈なものにならざるを得ない。2016年にパスピエがリリースした「ヨアケマエ」、「永すぎた春/ハイパーリアリスト」、「メーデー」という3枚のシングルには、強い緊張感が通底していた。


 特にデビュー5周年記念日にリリースした「メーデー」は例外的に作詞の9割方を成田が担当し、〈そろそろ本気だせますか 猜疑心こそ罪じゃない?〉というフレーズ然り、パスピエのダイナミックかつオルタナティブなポップネスの王道に新しい風を吹かせようとする意志を感じさせるサウンド然り、成田がバンド内に活を入れるようなムードがあった。


 そして、一連のシングル曲群にあった緊張感こそがパスピエを新たな局面へと導き、この4枚目のニューアルバム『&DNA』に結実したのである。


成田ハネダ:「2016年は5周年ということもあって、意識的にまたイチからバンドの土壌を作っていこうと思った1年でした。曲作りに関しても消費したカロリーは今まで以上に高かったです。そもそもパスピエというバンドのイメージが、他のバンドとかなりベクトルが違うんだろうなと思っていて。今年は表向きな見え方も、顔出しも含めてどんどんリアルになっていったので、バンド・パスピエとしてどう戦っていくかをすごく考えました。今までのように実態が見えないことのおもしろさのバランスが大きく変わったからこそ、より深くパスピエというバンドを認識してもらうための曲調であり音作りを1曲1曲探っていった結果として形作られたアルバムがこの『&DNA』なんです」


大胡田なつき:「歌詞に関しても、この人が大胡田なつきというボーカリストなんだという実体が知られてるからこそ書けるワードやフレーズがあって。バンドの存在が現実的なものになってきたから、徐々に現実味や生身を感じさせることを歌詞にしていくことも意識するようになりました。ただ、今も変わらず思っているのは、私はリアルを見せることだけが正解ではないということで。あくまでリスナーのみなさんには曲を聴いてこちらの世界に入ってきてほしいと思ってるんです。やっぱり私はフィクションのなかに聴き手を引きずり込みたいんですよね。その考えは今後も貫いていきたいと思ってます」


成田:「こうやってせめぎ合えるのは、僕も大胡田もプライド持ってやれてるからなんですよね」


 パスピエは今後も比類なきバンドであり続ける―『&DNA』というアルバムはそのような宣言のようにも捉えられる。前出の3枚の先行シングル(計4曲)を含む全12曲。


 オリエンタルな情緒とともに春に別れを告げる「永すぎた春」に始まり、アルバムに入ることであらためてパスピエが立っている現在地のダイナミズムを感じる「ヨアケマエ」で閉じる構成はとてもドラマティックだ。ブラックミュージック由来のグルーヴを昇華したパスピエ流歌謡とでも称したくなるM3「DISTANCE」、巧みな引き算が施されたサウンドにフィクションとノンフィクションが交錯する大胡田の作家性が冴え渡る歌が軽快に跳ねるM7「マイ・フィクション」、あきらかに新機軸のポピュラリティをつかんだSFポップのM8「スーパーカー」(デモはデビュー当時からあったという)、深淵なサウンドスケープが揺れるM9「夜の子供」、マリンバとシャッフルビートをフィーチャーしたキュートな「おいしい関係」など、曲同士が拮抗する際立ち具合は抜群だ。同時に、とても味わい深い。


成田:「デビュー5周年を過ぎて思ったのは、僕らの曲って一口目は珍味に感じると思うんですよね。でも、三口目から中毒性を感じてもらえるはずだという信念があって。そのなかで、僕らなりの前菜だったりデザート的な曲があって。最初はちょっと重たいアルバムになるかな?という危惧もあったんですけど、最後に〈おいしい関係〉のような曲もできて、12曲並べてみたら今のパスピエらしい緊張感もありつつ、それこそフルコースのなかで1曲1曲をおもしろいバランスで味わえるアルバムになったと思いますね」


大胡田:「私自身、これが今のパスピエだと思えるアルバムになったからこそ、1曲1曲がバンドのDNAように思えたんですよね。だから、今回のアルバムタイトルは『&DNA』しか浮かばなかったんです」


 5周年を経て、向こう5年間のパスピエの未来を占う意味でも大きな指標となるであろうアルバム。それが、『&DNA』だ。


取材・文/三宅正一(Q2)


4th Full Album「&DNA」

2017.1.25 ON SALE

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